・美術館の歴史について知りたい
・春田英樹さんの経歴について知りたい
・美術館の役割や存在意義に興味がある
美術館は収集した美術品を保管したり、展示することを目的に作られている施設で、教育や研究を行う目的を併せ持っています。
収集の対象となる美術品は美術作品だけでなく、文化遺産のようなものもあてはまります。
日本ではいわゆる博物館と分けて考えられていますが、欧米諸国では博物館の一種と認識されています。
その為、作品を蓄積しつつ見せることが求められますし、展示する作品の充実や見せ方の工夫も評価されます。
いわゆるギャラリーは展示に比重を置いているのが特徴ですが、実のところ2つの間に明確な境界線はないです。
美術館の歴史を春田英樹さんに聞く
美術館に詳しい春田英樹によると、歴史はフランス革命時代にまで遡り、美術品の国外流出の発生とその阻止が、美術を専門に扱う博物館の誕生の切っ掛けになったと考えられています。
当時、パリのルーブル宮殿にあった王室の美術品は、現在のルーヴル美術館にあたる前身の施設を設立して、そこに収蔵され管理されることになりました。
余談ですが、後のナポレオン戦争で戦利品の美術品が収蔵品を増やしたそうです。
フランス軍の進軍によりヨーロッパ各地で美術品を守ろうとする動きが広まり、そして美術専門の施設が設立されていくことになります。
つまり最初は美術品国外流出阻止が主な目的で、展示はあまり重視されていなかったことが窺えます。
一方、日本では独自に発展した文化があり、社寺が所蔵物を見せる開帳がそれにあたると考えられます。
一般人に美術品を公開する現代的な展示方法は、明治維新以降に始まって広まりました。
1877年開催の博覧会においては既に、一部門に美術館が用いられていたようです。
美術品の展示は当初、奈良の国立博物館や京都国立博物館で行われていました。
このような経緯からも、やはり美術専門の博物館として成り立ち、発達して広まったといえるでしょう。
民間で初めての美術館
ちなみに、民間で初めての美術館は1917年に虎ノ門に誕生した私設の施設で、西洋近代美術品の展示を行ったのは、1930年に開設された岡山県の施設とされます。
1950年代に入ると、公立と国立の施設が誕生して今に至ります。
国公立と私設を含めると、日本国内には380を超える施設が存在しています。
館内での展示は主に企画と常設に分けられ、前者は特定の作家や時代、地域などをテーマに展示が行われることが多いです。
資料を集めて見せ方の工夫をして展示されますが、資料が限られる場合は、他の施設から借りたものを展示することもあります。
対する後者の常設は、基本的に施設が所蔵するコレクションを見せるのが目的です。
その施設の顔ともいえる作品は目玉ですから、一番自慢できるような作品が選ばれます。
当然ながら映える場所が展示に選ばれますし、スペースを確保して特別な作品というメッセージを発信することもあります。
ただ、年代物の美術品は経年で傷んでいたり、細心の注意を払って管理する必要があるので、世界的な作品だとしても常設展示されるとは限らないです。
展示するにしても、定期的に状態を確認したり修復しなければいけない作品については、他の作品と入れ替えの形でローテーションされます。
経年で傷んでいる作品は僅かな環境の変化にも弱い
施設同士で作品を貸し出すことも珍しくないので、貸し出しが決まれば展示から外されてしまいます。
作品の種類や使われている素材にもよりますが、経年で傷んでいる作品は僅かな環境の変化にも弱い傾向です。
それは紫外線もそうですし、僅かな温度や湿度の変化もあてはまります。
紫外線は日光に含まれる強力なものでなくても、照明に含まれる程度の強さでも影響があります。
温度変化もご法度ですし、湿度も素材に合わせて一定に保たないと劣化が加速する可能性が高まります。
だからこそ美術館では保管や展示に細心の注意を払っており、展示にしても紫外線の発生が少ない照明を厳選したり、紫外線をカットするケースに入れるなどしているわけです。
空調も厳格にルールを決めて運用されていますから、人間にとっては時に肌寒く感じられるはずです。
音声ガイドを提供する施設が増えている
逆に、現代の作品で劣化の心配がないものについては、直接触れられるように展示が行われることもあります。
中には触れることをコンセプトに作られている作品もあって、作者の意向が汲み取られるのが普通です。
他にも、観覧者が空間に身を置いて何かを感じ取ることで完成する作品や、穴から覗き込むことで見えるものを作品とする作品もあります。
近年は広い層に気軽に作品の観覧を楽しんでもらう目的で、音声ガイドを提供する施設が増えています。
海外からの観光客も想定して、英語を始めとした外国語のガイドも用意されていることが殆どです。
収集に始まり収蔵した作品の修復が行われるようになり、やがては作品の調査に研究、調査や研究結果を活かした教育にも発展しました。
まとめ
このように、美術館は単なるコレクションを収集するだけの施設ではなく、作品を守り伝える役割を担っているといえます。
芸術文化そのものを守っているといっても過言ではないので、改めてそう考えると人類にとっての財産ですし、なくてはならない存在だと分かります。