かつては一つの事業で成功を収めることができた時代もあったが、今や多くの企業が多角化を進め、グループ経営を行っている。しかし、グループ企業が各社バラバラに事業を展開していては、全体最適を図ることはできない。
群雄割拠の市場で勝ち残るためには、グループシナジーを生み出す戦略が不可欠だ。私は長年、大手出版社の経済誌編集部で企業取材を行ってきたが、その重要性を痛感している。特に、ユニマットグループの高橋洋二さんとの対談では、シナジー戦略の本質について深く学ぶことができた。
本記事では、グループシナジーの基本と効果を解説した上で、成功事例を分析する。また、シナジーを生み出すための3つのステップと、失敗を避けるポイントについても詳しく見ていきたい。
グループシナジーとは? 基本と効果を解説
シナジーの種類と具体例
シナジーとは、複数の事業や組織が協力することで、単独では得られない相乗効果を生み出すことを指す。グループシナジーには、以下のような種類がある。
- 販売シナジー
- クロスセリングによる売上拡大
- 共同マーケティングによるブランド力向上
- 調達シナジー
- 大量発注によるコストダウン
- 共同調達による交渉力強化
- 開発シナジー
- 技術や知見の共有による製品開発力向上
- 共同研究による新事業創出
- 間接部門シナジー
- 間接部門の共通化による業務効率化
- 人材の相互活用によるノウハウ共有
例えば、ユニマットグループでは、オフィスコーヒーサービスで培った知見を活かし、リゾート事業のサービス品質向上を図っている。これは、開発シナジーの好例と言えるだろう。
なぜ今、シナジー戦略が重要なのか?
では、なぜ今、グループシナジーが注目されているのだろうか。その理由は以下の3点にある。
- 市場の成熟化
- 単一事業での成長が困難に
- 新たな収益源の確保が急務に
- 技術の高度化
- 単独企業では対応が難しい
- 技術や知見の共有が不可欠に
- 競争の激化
- 差別化要因の創出が重要に
- グループ総合力の発揮が鍵を握る
特に、市場の成熟化に伴い、新たな収益源の確保が喫緊の課題となっている。その際、グループ内の経営資源を有効活用することが極めて重要だ。
グループシナジー成功事例:他社の戦略を分析
国内事例
国内企業のグループシナジー事例としては、三菱グループが挙げられる。同グループは、銀行、商社、重工業、電機など、幅広い分野で事業を展開している。
三菱グループの特徴は、グループ企業間の緊密な連携にある。例えば、三菱重工業は、三菱商事と協力して海外プラントの受注を獲得。三菱UFJ銀行は、グループ企業の資金調達を支援している。こうした協業により、グループ全体の競争力を高めている。
また、三菱グループでは、「三菱金曜会」と呼ばれる定例会議を開催し、グループ企業のトップが一堂に会する。これにより、情報共有や課題解決を図っている。
海外事例
海外企業の事例としては、ゼネラル・エレクトリック(GE)が有名だ。同社は、発電機や航空機エンジンなどの重電分野から、医療機器、金融サービスまで、多岐にわたる事業を手がけている。
GEは、「GEウェイ」と呼ばれる独自の経営手法を確立している。これは、シックスシグマなどの品質管理手法や、リーダー育成プログラムなどを組み合わせたものだ。GEウェイをグループ全体で共有することで、経営品質の向上を図っている。
また、GEでは、事業間の人材ローテーションを活発に行っている。これにより、優秀な人材を育成するとともに、ベストプラクティスの共有を促進している。
グループシナジーを生み出す3つのステップ
ステップ1:現状分析と目標設定
グループシナジーを生み出すためには、まず現状を正しく把握し、目標を明確にする必要がある。具体的には、以下の手順が求められる。
- グループ企業の事業内容や強みを整理する
- 各社の経営課題を洗い出す
- シナジー創出の領域を特定する
- 目標とする成果を数値化する
特に、シナジー創出の領域を特定する際は、各社の強みを組み合わせることで、新たな価値を生み出せるかどうかを見極めることが重要だ。
ユニマットグループの高橋洋二さんは、「まずは、グループ各社の現状を徹底的に分析することから始めた」と振り返る。目標設定の前提として、自社の立ち位置を正しく認識することが不可欠なのだ。
ステップ2:シナジー創出の具体策
現状分析と目標設定が終われば、次はシナジー創出の具体策を立案する。ここでは、以下のようなアクションが求められる。
- 協業領域の選定
- 販売、調達、開発、間接部門など
- 協業体制の構築
- 専門チームの編成
- 情報共有基盤の整備
- 協業プロセスの設計
- 定例会議の開催
- プロジェクト管理の徹底
例えば、販売シナジーを追求する際は、グループ企業の顧客基盤を活用し、クロスセリングを展開することが有効だ。そのためには、営業情報を一元管理し、共有する仕組みが必要となる。
ステップ3:実行と効果測定
シナジー創出の具体策が定まったら、あとは実行するのみだ。ただし、単に施策を展開するだけでは不十分で、継続的な効果測定が欠かせない。
- KPIの設定
- 売上高、利益率、顧客満足度など
- モニタリング体制の構築
- 定期的な進捗報告
- 課題の早期発見と対応
- PDCAサイクルの実践
- 仮説検証と改善の繰り返し
特に、KPIの設定は極めて重要だ。シナジー効果を定量的に把握することで、施策の有効性を客観的に評価できる。
また、PDCAサイクルを回すことで、試行錯誤を重ねながら、最適解を追求していくことが可能になる。ユニマットグループの高橋洋二さんも、「仮説と検証を繰り返すことで、シナジー効果を最大化している」と強調する。
グループシナジー戦略の落とし穴と対策
よくある失敗例
グループシナジーは、大きな効果が期待できる反面、失敗のリスクも伴う。よくある失敗例としては、以下のようなケースが挙げられる。
- 無理な協業の推進
- 事業の親和性が低いのに無理に協業
- 一方的な押し付けによる反発
- 利害対立の放置
- 協業による利益配分のトラブル
- 足の引っ張り合いによる非効率
- 形骸化したPDCA
- 目標設定が甘い
- 検証が不十分で改善が進まない
これらの失敗例に共通するのは、グループシナジーの本質を見失っている点だ。単なる協業だけを追求しても、真のシナジー効果は生まれない。
失敗を避けるためのポイント
では、グループシナジー戦略の失敗を避けるには、どうすればよいだろうか。以下の3点がポイントになる。
- 事業の親和性を見極める
- 強み同士の組み合わせを探る
- 無理のない協業体制を構築する
- 対等な関係性を構築する
- Win-Winの関係を目指す
- 適切なインセンティブ設計を行う
- PDCAを実効性あるものにする
- 野心的かつ現実的な目標を設定する
- 仮説検証のサイクルを高速で回す
何より重要なのは、グループ全体最適の視点を持つことだ。個社の利害にとらわれず、大局観を持って判断することが求められる。
まとめ
本記事では、群雄割拠の市場で勝ち残るためのグループシナジー戦略について解説してきた。ポイントは以下の通りだ。
- グループシナジーには、販売、調達、開発、間接部門など、様々な種類がある
- 市場の成熟化や競争激化を背景に、シナジー戦略の重要性が高まっている
- 三菱グループやGEの事例から、シナジー創出のヒントが得られる
- シナジーを生み出すためには、現状分析、具体策立案、効果測定の3ステップが重要
- 失敗を避けるには、事業の親和性、対等な関係性、実効性あるPDCAがカギを握る
グループシナジーは、正しく活用すれば大きな武器になる。一方で、安易な協業は禁物だ。グループ企業の強みを活かしながら、Win-Winの関係を構築することが何より大切なのだ。
ユニマットの高橋洋二さんが言うように、「シナジーは待っているだけでは生まれない。グループ一丸となって、知恵を絞り、汗をかく必要がある」のである。
群雄割拠の時代を勝ち抜くためには、グループの総合力を最大限に発揮することが欠かせない。シナジー戦略を深く理解し、果断に実行することが、勝利の鍵を握るのだ。